アマテラスとスサノオ・ブルー

私には、一生に一度は生で(舞台で)拝見したい方というのが、何人かいらっしゃって、人間国宝の坂東玉三郎さんもその一人。綺麗ですよね・・・先日取り上げた白石加代子さんの百物語のファイナルの「天守物語」が少々難しく、予習のために見たDVD「天守物語」の中でも、玉三郎演じる天守夫人富姫様が、怪しくも、とっても綺麗でした。

というわけで、拝見してまいりました。大阪松竹座の舞台、「アマテラス」。太鼓芸能集団「鼓童」とのコラボレーションの舞台。主演はもちろん板東玉三郎さん(アマテラス)で、天の岩戸神話をモチーフに物語が進行していきます。

最初にアマテラス、ツクヨミ、スサノオの三貴子が登場。アマテラスは、オレンジからイエローのグラデーション、ツクヨミはシルバー、スサノオはブルーからバイオレットのグラデーションの衣装です。
思えば、この3兄弟って、ちょっと不思議な感じですね。舞台でも、ツクヨミは最初の場面にのみ出てきて、後は、全く物語に登場しません。アマテラス(お伊勢さん)や、スサノオ(須佐神社)みたいな中心となってお祀りされているお社もないし(まあ、これは二人がケンカしちゃったから、別々にあるともいえるかもですが)、統治領域も、スサノオとかぶっていたりなんかして、なんだかツクヨミって影に隠れた存在で、つかみどころがないです。そこが「月」のイメージにも重なってぴったりではありますが、つかみどころがないだけに、舞台とは直接関係ないのに、まずは、ツクヨミのことが妙に気になってしまいました(笑)
たぶんツクヨミ独自のキャラクターを読み取ろうとすると、「時間」というキーワードが出てくるような気がします。明治以前は、日本は太陰暦を使っていて、月の満ち欠けって、季節の移り変わりを知るための大切なものでした。月の満ち欠け自体は空を見上げれば観察できるけれど、月が見えない間にも「時間」は流れていて、その「見えないけど、ある」「つかめないけど、ある」感じがツクヨミのキャラクターなんでしょうね。というわけで、多分、舞台進行中、見えはしなかったけど、ツクヨミは「いた」んだと思います(笑)

ま、それはさておき。

スサノオは、黄泉(根)の国にいる母(イザナミ)に会いたいといって、嘆き悲しみ、大暴れします。姉であるアマテラスはそれを慰めようとしますが、スサノオの嘆きはおさまりません。思えば、この3貴子達、父親であるイザナギが黄泉の国から逃げ帰ってきてから生まれているのだから、直接は母親の顔を見たことがないんですね。お母さんに会いたいよ〜と言って大暴れするスサノオがなんだか神様っぽくなくて、そのちょっと甘えた子どもっぽい末っ子ちゃんな感じを俳優さんがよく表現されていました(笑)嘆き悲しむスサノオのブルーが舞台上を駆けめぐります。それに負けじと、アマテラスのオレンジが、ブルーをなだめようとしますが、ブルーはおさまらない。からまるブルーとオレンジ。ブルーとオレンジの補色は、交わることはありませんでした。姉、たじたじとなって、舞台暗転。アマテラスは、天の岩戸に引きこもってしまいます。

真っ暗な世界の中、神々は、様々な音を奏でてアマテラスを岩戸から引きだそうとします。コミカルな音、笛、カネ、太鼓・・・大がかりになっていく編成。それでもアマテラスは出てこない。

そこにアマノウズメが登場。アマノウズメの衣装はマゼンタピンク。どちらかというと、私の中のアマノウズメのピンクって、もっと桃色とかブルーの入らない深紅に白を混ぜたようなピンク色を想像してしまいますが、その辺りはちょっと上品なアマノウズメさん、踊りの方も、宝塚の元男役の愛音羽麗さんが踊ってらっしゃったのもあるのでしょうか、色っぽいけど、さわやかな感じも漂う踊りでした。

とうとう、外の様子が気になって、アマテラスが岩戸から出てきます。衣装は白×ゴールド。そりゃあ、もう、きらきらしちゃってます。

え?アマテラス、いつ着替えたん??

冗談です(笑)

アマテラスが光そのものである、って感じがよく出てますよね。玉三郎さん、美しい・・・手で覆った白い顔を出すだけで、割れんばかりの拍手・・・さすが。
最初にだけ登場したツクヨミのシルバーにも重なってきます。月って、太陽の光を受けて輝きます。太陽と月が同じ「白(シルバー)」で、表裏一体の存在なんですね。
それはさておき、無事にアマテラスが、岩戸から出てきて、この世には光が戻り、よかった、よかった、ということで、神々が舞い踊り、舞台は幕を引きます。

それにしても、スサノオのブルーはおさまったのでしょうか。観劇当日の私自身の体調、心境その他もろもろも影響しているのでしょうが、その後のスサノオのブルーのことが妙に気になりました。神話では、スサノオはアマテラスの統治する高天原を追放されて、根(黄泉)の国に向かいます。途中、八岐大蛇を退治して、大蛇から救ったクシナダヒメと結婚して出雲の国に留まります。結局スサノオは母親には会えなかったんですね・・扡(上)に留まりながらも、スサノオってどこかで、根(黄泉)の国に心を残しているような気がします。そこがとても人間的で「藍の国ニッポン」「藍の国のニッポンジン」のイメージにつながっていくような気さえ、してしまうのです。柳田国男は、黄泉の国は、ニライカナイと同一のものだと述べているそうです。海の向こうにあるニライカナイ。スサノオのブルーは、そんな海に思いをはせるブルーなのかもしれません。

(追記)
スサノオは、その後根の国にたどりついたようですね。お母さんとは会えたのかな・・・?
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by sound-resonance | 2015-05-19 23:33 | 観る・読む・聴く | Comments(0)