音と時間、そして静寂

音には、観察する価値があると思われる、非常に興味深い側面がいくつかある。その一つが持続時間である。音と時間には関係があるということだが、それ以前に音と静寂の間につながりがある。音の持続時間、そして音と静寂との関係はきわめて客観的である。もしある音を歌うか笛で吹くかしているとき、もうこれ以上息を吹き込めなくなると、その音はなくなる。では、音はどこに行くのだろうか?再び静寂に戻るのだ。音は静寂と関係があり、それは重力の法則と似ている。地面から物体をもち上げるにはエネルギーを使わなくてはならず、その高さで物を保持するにはエネルギーを加え続けなくてはならない。そうでないと物は地面に落ちてしまう。音についてもまったく同じことが言え、音を出すにはある程度のエネルギーが必要である。しかし、その後それを出し続けるには、さらにエネルギーを加えなくてはならない。そうでないとそれはどこかに行ってしまい、静寂の中で絶え果ててしまうからだ。それゆえ、音はがっちりと時間とつながっている。それが、音に本当の悲劇的要素を与えているものだろう。音楽となるとなおさらそうなる。音が死に絶えるかもしれないという事実、そしてどの音にもそれ自身の寿命があるという事実だ。

                           ダニエル・バレンボイム
                          (「音楽と人間と宇宙」より引用)

音、あるいは音楽が、時間と静寂と深い関わりを持っているということを示す文章。
音は、音だけがあっても、成立せず、音が消える時間、すなわち静寂があってこそ、存在するもの。
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by sound-resonance | 2016-01-21 19:01 | 音・色あれこれ | Comments(0)