雨過天青

大阪は中之島にある東洋陶磁美術館で開催されている「台北 国立故宮博物館 北宋汝窯 青磁 水仙盆」展を見に行ってきました。

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中国の北宋の時代に、宮廷用の青磁を焼いていた「汝窯(じょよう)」という窯があって、その窯に時の皇帝が「雨過天青」の色を求めたのだそうです。「雨過天青(うかてんせい)」・・・雨上がりの雲間から見える空の色。汝窯は20年ほどしか稼働していなかったようで、元々宮廷用の選りすぐりの品しか「完成品」として残さなかったこともあり、現存する汝窯の品とされている磁器は世界でもわずか90点ほどなのだとか。

今回の展覧会のテーマになっている「水仙盆」については、世界で6点が確認されているのだそうです。4点が故宮博物館蔵、1点が吉林省博物院蔵、そして、1点が会場となっている東洋陶磁美術館蔵。なかなかやるな、東洋陶磁美術館!な感じなんですが、そういうご縁もあって、今回これまで門外不出だった2点を含む故宮博物館所蔵の水仙盆4点が日本にやってきて、現存する6点の水仙盆のうちの5点が一堂に会しちゃった地味にすごい展覧会なのです。

とはいえ、何をいっても、陶磁器の展覧会なので、そこまで混まないだろう、とタカをくくって行ったら、平日の昼間にもかかわらずけっこうな人が入っていてびっくり。どうも、NHKの「日曜美術館」に取り上げられたみたいです。「人類史上最高の焼き物」「もう二度と出会えないかもしれない」とか言われちゃったら、見たくもなりますよね。なんだかんだいって、テレビの効果ってまだまだすごいんですね。うーむ、テレビに出る前に行っておけばよかった・・・

ま、そうはいっても、さすがに待ち時間などは出ておらず、ちょっと混んでるな、くらいの感じではあったので、十分に鑑賞して参りました。雨上がりの空の青、雲間からかいま見ることのできるブルーって、雲の加減で刻一刻と色を変えて、それだけに作り手が想像し、目指す「天青」の色はそれぞれであったようで、5点とも、同じ「天青」でも少しずつ色が違います。

こう・・・雨上がりの空の青って、例えば南の島の底抜けのブルーとは全然違うんですよね。雨が上がったばっかりで、空気は湿気を帯びていて、雲もまだ厚くて、そんな雲の合間からちらっと見える青は、ちょっとグレーがかっていて、グリーンががってもいて、でもブルー、みたいな、微妙なブルー。繊細で優しい水色っていう感じです。

「人類史上最高のやきもの」と銘打たれている「無紋」の水仙盆は、貫(焼いた時にできる釉薬のひびのようなもの)がなくて表面が滑らか。そこにほんのりとした淡い水色が載っていて、確かにとても綺麗。ところによって、釉薬が薄い部分があって、その部分がほんのりピンク色に見えて、なんだか生まれたての赤ちゃんのようなピュアさ。でも、なんだかはかなすぎて、ちょっと不安にもなる感じもあります。
例えば日光東照宮の逆さ柱みたいに、完璧なものは滅びるしかないから、わざと完璧さを外していく、みたいなそういう外し方をしたくなる・・・貫のひとつでも入ってればよかったのに・・・みたいな(笑)ということで、個人的には「天青色の極み」と銘打たれていた貫の入った水仙盆の方が好きで安心して見ていられました。色も無紋のものよりもう少しきっちり乗っていて綺麗だし(笑)ま、でもそういうのは、断然好みの問題なので、人それぞれの感想があると思います。

景徳鎮窯が、汝窯にオマージュを捧げ、技術の限りを尽くして作ったという「倣汝窯青磁水仙盆」も故宮博物館から来ていて展示されていましたが、写真ではほとんど汝窯のものと同じに見えますが、実物をみるとやっぱりちょっと違ってみえました。
照明のせいかなああ。。。。。なんだか透明感というかきらきら感が違ったような・・この水仙盆が作られた18世紀、清の時の皇帝乾隆帝も、「汝窯のものとは違うなあ」という感想だったようです。
せっかく技の限りを尽くしたのに、こんな展示のされ方、景徳鎮が若干気の毒な感じもしますが、並べてあるからの感想であって、名前を伏せて1つだけ見せられて「どっち?」って言われたらたぶん、全然わかりません(笑)景徳鎮の技術が素晴らしいことはあくまで前提のお話。まあ、でも、汝窯ってそれだけすごい窯だったんですね。

汝窯で焼かれた磁器の釉薬の中には、アノーサイト(灰長石)という長石の一種の他に、めのうが含まれていることがわかってきたのだそうです。長石といえば、ムーンストーンをまっさきに思い浮かべたんですが、灰長石といえば、サンストーンがその一種となるようです。そこにめのうも入ってくる・・・あのきらきら感って、微細な石のきらきら感だったのかも。18世紀の景徳鎮にはこの事実、知られていたんでしょうか。

記念撮影コーナーもあります。
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そういえば、この水仙盆、北宋時代、何に使用されていたのか、よくわかっていないそうです。祭司用だとか、盆栽を入れていたとか、顔を洗っていたとか、はたまたペット用の水盆だとかいろんな説があるのだそう。でも、単純にここに水仙がさしてあったら綺麗だろうな、とも思ったのです。水色×黄色。私の好きな色の組み合わせ(笑)水仙って、美しい花の姿と芳香がまるで仙人のようだというところ、水の豊かな土地を好むところから来た名前なんだそうですが、淡い水色の水仙盆にいけられた水仙を眺めながら、皇帝は宮中で、仙人のように静かに瞑想の世界に入り込んでいたのかも、そんな想像をしたりもするのです。

東洋陶磁美術館 3月26日まで

三光神社でも今水仙が綺麗に咲いています。

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by sound-resonance | 2017-03-02 20:21 | 観る・読む・聴く | Comments(0)