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黄泉の花 その2

先日「黄泉の花」という舞踏を観た、という話を書きました。

ウィキペディアによると、黄泉というのは、「よみ」という音に漢語の「黄泉」という漢字を合わせたものなのだそうです。黄泉の「黄」は、五行のうちの「土」を表していて、古代の中国人は、死者の世界が地下にあると考えていたことから、土の下=地下=死者の国となったそうです。

これも、ウィキペディア情報で恐縮ですが、西洋的なダンス、例えばバレエ、が、ピルエット・跳躍などのテクニックにより天上界を志向するのに対して、舞踏は、床や地面へのこだわり、蟹股、低く曲げた腰などによって下界を志向するとありました。

思えば、このように「下界、地面(土)」にこだわる舞踏が、土蔵の中で展開するというのは、とても興味深いです。

土蔵は、元々モノを収納するための倉庫、その季節、その時期には必要のないモノをしまっておくための収納庫で、人の生活する場所ではありません。窓のない入り口以外に外との接点がない閉鎖空間。悪さをした時に罰として閉じ込められる場所。幸か不幸か私は土蔵に閉じ込められたという経験はありませんが(そもそも土蔵のあるような家って限られますよね・・・)、押し入れの中に潜り込むのはけっこう好きでした(笑)狭い場所に閉じ込められるというのは、恐怖と共に、どこか安心感もあったりしませんか?
土で作られた蔵、その狭い空間、閉じられた空間は胎内回帰を疑似体験できる場所でもあるのかもしれません。そんな場所で、土、地面を志向する舞踏を見ることは、胎内回帰、胎内巡りを踊り手と観客が共にすること、かもしれません。

そう思うと、「黄泉の花」という演目も意味深に思えてきます。土蔵で、「黄泉の花」という舞踏を見るということ。それは、死と再生の通過儀礼そのものなのかもしれません。


by sound-resonance | 2017-07-30 22:12 | 観る・読む・聴く