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北斎ブルー

さて、先日葛飾北斎の娘、お栄(応為)の大切にした「赤」について書きましたが、実際にまだ行ってないので、定かではないものの、現在あべのハルカスで開催中の「北斎展」の目玉のひとつが、富嶽三十六景のうちのひとつ、「神奈川沖浪裏」みたいですね。ポスターやなんかにもこの絵が使用されています。
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なんとこの絵は大英博物館からやってくるようです。版画なので、当時数千枚単位で印刷されたであろうと思われるこの絵ですが、今回展示される大英博物館蔵のものは、最初の頃に刷られたものであろうと言われていて、エッジが効いていて、色も特に鮮やかなんだとか。

この絵の青は「北斎ブルー」などとも言われて、西洋人にとっての「神秘のブルーの国ニッポン」の象徴のようにもなっていますが、日本古来の顔料である植物性の「藍」と、輸入物の「ベロ藍」の2種類の青がうまく使い分けられているという特徴があるんだそうです。

「ベロ藍」とは、プルシアン・ブルーのこと。フェロシアン化鉄を基にした合成の顔料で、18世紀にプロイセンで発見されたことからこの名で呼ばれるようになった濃い青のことです。日本には、文政、天保年間(1818〜1840年頃)にオランダ・中国から大量に輸入され、浮世絵にも使われるようになりました。プルシアン・ブルーは、ベルリン・ブルーとも呼ばれ、「ベルリン」がなまって、「ベロ藍」と呼ばれるようになったのだとか。

それまで使われていた顔料である藍や露草など植物性の青は、透明感はあるものの、重ね塗りができないなどの欠点がありました。しかしながら、プルシアン・ブルーは、重ね塗りができる、退色しにくい、など、これまでの「青色」にはない特徴があったのです。

新しもの好き、探究心旺盛な北斎がこの顔料に目をつけないわけがない(笑)彼はまた、西洋絵画も熱心に研究しており、遠近法も自らの絵に取り入れようとしました。プルシアン・ブルーの重ね塗りができるという特徴は、奥行き、立体感を出すにもうってつけでした。北斎は輪郭には伝統的な藍を、ベタ塗り部分には、新しい顔料であるベロ藍を用いて、波しぶきの水々しさと、奥行きのある迫力ある波のうねりを表現したんですね。

こうやって、完成した絵は海を渡り、西洋の絵師達に多大な影響を与え「ジャポニズム」ブームの一翼を担いました。西洋にとっての海の向こうの遠い国、海に囲まれた神秘の国、圧倒的な異国としての「ニッポン」のイメージを定着させるのに一役かったであろうこの絵の「青」が、元々はプロイセン、西洋から来た「青」だったというのも面白いですね。

とか書いていたら、「北斎展」も見に行かなくちゃ、という気持ちになってきました。混むんだろうなあ〜(泣)


by sound-resonance | 2017-10-12 21:02 | 観る・読む・聴く