紫の上→バイオレット

 色で読む「源氏物語」シリーズ、今日は「紫の上」です。
 紫の上は、そのものズバリ、バイオレット(紫色)のイメージです。
 光源氏の憧れの君、藤壺(そういえば、藤の花も紫色ですね)の縁(ゆかり=紫)の者であり、童の頃に光源氏に引き取られた、紫の上。物語の中で、彼女は美しく、教養にあふれ、気配りや心遣いを持って物事を采配できる、誰もが愛さずにはおられない理想の女性として描かれています。
 この世における彼女の使命は、光君を愛することであり、彼とともにあり、彼と一心同体であること。彼なくしては、彼女はありえません。そんな彼女を見て、光君は癒されます。彼にとって、彼女は、どんな女性の元を訪れても、最後に帰る「拠り所」であり、そのことを自覚していたからこそ、彼女は実質上の北の方としての誇りとプライドを保っていられたのでしょう。
 光君が、彼にまつわる女性達に衣装を選ぶシーンがあるのですが(初音)、彼は、紫の上のためa0155838_14574656.gifに葡萄染め(赤紫)と紅梅色(濃いピンク)の襲の衣装を選びます。このことからも、彼女が彼にとって「癒しと愛の存在」だったことがわかるような気がします。彼女は、六条院の春の町の女主人であり、まさに「この世の春」を体現した女性であるといえます。
 でも、果たして紫の上は「彼女自身」を生きたのでしょうか?
 「理想の女性」「完璧な女性」とは誰にとっての「理想」「完璧」だったのでしょうか?
 バイオレット(紫の上)とイエロー(光源氏)は、補色関係にあります。
 幼少期から光源氏の元で、彼にとっての理想の女性として育てられた紫の上は、光源氏という男(=イエロー)あっての女(=紫)であり、彼の中の理想の女性、あるいは彼の中の女の部分をこの世で体現した「人形(ひとがた)」でしかなかったのです。(またもやちょっと心理学的かな・・・)
 これほど愛し、愛され、癒し、癒されていた二人でしたが、紫の上はあくまでも、実質上の北の方であり、光源氏は彼女を正室とはしませんでした。明石の方の産んだ女の子(後の明石の女御)を引き取り育てはしますが、紫の上自身は子どもを授かりませんでした。深読み、暴走ついでに言うと、光源氏は自分自身(=紫の上)とは「夫婦」になれないし、ましてや、自分自身と愛し合っても、子どもなんて産まれるはずもありませんね。
 後に光源氏が、女三宮を正夫人として迎えた時、紫の上は改めて己の存在の危うさを目の当たりにさせられ、一心同体だったはずの光源氏との間にもはや埋めることのできない溝を感じるようになります。彼女は、現世に生きることに虚しさを感じ、出家を望みます。胸の痛い出来事ではありますが、ようやく、彼女が本当に「彼女自身」を生きようとした瞬間だったのかもしれません。
 でも。
 光源氏は、彼女の出家を許しませんでした。
 最後の最後まで、光源氏のために、「献身的に」生きた紫の上、なのでした。

            襲の色相は近似色です。色見本の館より引用 

 ☆次回は、六条御息所を取り上げます。
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by sound-resonance | 2010-02-03 22:17 | 色で読む源氏物語 | Comments(0)