フェスティバルの最後にはスペシャルコンサート(有料)がありました。いろいろと面白い曲があったんですが、前回話題にしたアルヴィン・ルシエさんの「Sizzles」という曲がとてもユニークでした。
東京芸術劇場のコンサートホールには立派なパイプオルガンがあるんですが、そのパイプオルガンを使った音楽。といっても、主役はパイプオルガンではありません。パイプオルガンの前に、大太鼓、小太鼓等々の打楽器が置かれていて、その膜面に「豆」がまかれます。パイプオルガン奏者が登場し、オルガンの低重音を奏でます。その低重音によって、打楽器の膜面が共鳴し、「豆」が膜面の上で踊ります。その音をマイクで集めて、楽しんじゃおうというのが、この曲のコンセプト。すなわち、演奏者は「豆」ってことになるんでしょうか・・・・まあ、豆本人(達)は演奏しているつもりはさらさらないでしょうが・・・(笑)
パイプオルガンの位置が高いので、私たち(聴衆)には豆の様子はわかりません。打楽器の横に係の方が立っていて、豆が動く度に手を上げるので、「あ、豆反応したんだな」とわかる程度。ぶっちゃけ、パイプオルガンの音の方が目立っていて、「豆が演奏した音」がどれなのかも、よく判別できない・・・・(笑)なんだか微妙な気分になる、でも面白い音楽でした。
いやはや、私、パイプオルガンの演奏をちゃんと聞いたことがなくて、常日頃聞いてみたいものだと思っていたんですが、コンサートホールデビューが豆の手助けの音だなんて・・・・・まあ、でも、これはこれでとてつもなく忘れようもない想い出にはなりましたよ(笑)
事前に大掛かりな予行演習(実験)がされて、打楽器が最も共鳴する位置や、豆の種類、パイプオルガンの音の重ね方やなんかが念入りに検証されて本番を迎えたらしいですが、予行演習の時は、聴衆が入っていなかったので、豆が音を奏でるのかどうか、ドキドキだったそうです。無事、音楽が成立して、よかった、よかった。
あと、興味深かったのは、坂本龍一さんの「Cantus Omnibus Unus」という曲。というのか、この曲のライブ・リミックス。この曲そのものは悲しげなとても美しい曲で、東京混成合唱団のコーラスがとても素敵だったんですが、その生のコーラスの録音を使ったライブリミックスがその場で演奏?されたのが面白かったです。ギタリストと、トランぺッターと、アップルのコンピュータの前に2人とアーティスティック・ディレクターの藤倉さん。こういう場面をコンサートホールで見たのは初めてかも。
もうひとつ、いいな、と思ったのが、コンサートホールに入れない未就学の子ども達のための部屋が用意されていたこと。この部屋にはコンサートの様子が同時中継されていて、出入り自由だったみたいです。その名も「スクリームの部屋」、叫んでもよいお部屋(笑)。ここでは、子ども達が音楽を聞いて感じた感情を率直に表現してOKなんですね。
昨今、親子のために様々な場が開放される傾向があって、それはよい部分もあるけれど、大人としてのルールを守れる人のみに許された場所というのが残ってほしいな、と正直なところ思ってもいました。「スクリームの部屋」みたいに、お互いが気持ちよくあれる配慮、が広がっていくと素敵ですね。
# by sound-resonance | 2018-10-13 15:14 | 観る・読む・聴く