虹のアーティスト〜靉嘔〜
東京都現代美術館、エントランスからもう虹色です。
靉嘔(あいおう)という名前、「あいうえお」の中で人気の高い音を選んで、靉靆(あいたいー雲や霞がたなびいているさま)とサルトルの「嘔吐」から漢字をとったんですって。
私は、虹色のスペクトルを使った作品の印象が強かったのですが、いろいろな作品を作られているんですね。「世界を認識させるのは知覚であり、信じられるのは自分自身の感覚機能のみ」という思想から五感を追求した作品を作っておられるみたいです。例えば「触感」を追求した「フィンガーボックス」。箱に穴があいていて、そこに指を入れて様々な触感を楽しむ、というもの。展示の最後の方に虹色のフィンガーボックスがあって、思わずいろんな穴に指をつっこみまくってしまいました。最初はウレタンを大量に手に入れた時に身体ごと入ってウレタンを「感じる」ボックスを作ったのだとか。入ってみたい・・・。
そして、五感の中の「視覚」を追求したのが、有名な「虹のスペクトル」の一連の作品なんですね。
形を生み出すことを拒否し、「色」という視覚で世界を現そうとした作品たち。人間の知覚できる赤〜紫のすべての色を入れておけば、全宇宙が表現できるじゃないか!という発想、なかなかすごいです。そう、かも、しれません・・・(笑)
1カ所だけ撮影OKなエリアがあって、私も虹色身体になってみました。後ろに持ち手があって、顔だけ出すようになってます。顔はそのまま、身体だけは全宇宙(笑)
パネルはこんな感じ。
面白いな、と思ったのは、彼の作品は「コンセプト」であって、ノウハウさえ理解すれば、誰でも再現が可能だというところ。既存の作品を虹色化した作品が何点かありましたが、最初に元となる絵を4色に色分けして(4色あれば、平面は塗り分けられるらしいです)そこを虹のスペクトルで埋めていけば誰にでも、同じような作品が作れるのだそうです。先日の草間弥生さんが、作品そのものよりも、まずご本人ありきな感じがするのと対照的ですね。
でも。
思いがけずご本人拝見!
「シジフォスの神話」という作品。毎日曜日ごとに、新しく作り替えられるんだそうで、ラッキーなことに、その現場に遭遇しました。
赤、黄、緑等々1色で塗られた様々なオブジェ(靴とか、バケツとか、花とか・・)、×型に並べられていたものが一旦解体されて、今度は卍型に並べられていきます。
助手の方?はいらっしゃってだいたいは、並べていかれるのですが、ご本人が見極めながらオブジェの位置を決めていきます。
これを毎週やるのぉ!!
80歳超えてるのに・・・。すごいパワーです。
人間の知覚は、みんな同じものを見ているだろうという幻想に基づきつつ、それぞれに全く違ったものを見ていたりするもの。作っては壊す、「賽の河原」の作業が、そんな知覚のはかなさを表しているような気もしたりして・・・、でも、だからこそ、「その時にその場で見た」ライブ感、大事だな、なんて思いました。
もうひとつ面白いな、と思ったのは、靉嘔さんが現在129色のスペクトルを使って作品を描かれているということ。タッチオブサウンドで使用する音叉の幅がちょうど128HZ。Cから一オクターブ上の次のCが129HZ離れてます。しかも、色の隣に音がカタカナで描かれてあったりして、音と色を組み合わせた作品が!単なる偶然かもしれないけれど、音と色のつながりを感じることができたのでした。
靉嘔展、5月6日まで、東京都現代美術館で開催中です。
by sound-resonance | 2012-03-22 19:22 | 観る・読む・聴く