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紫式部ダイアリー

三谷幸喜さん脚本の演劇「紫式部ダイアリー」を見てきました。

数ヶ月前にちらしを見て、ちょっと気になりつつ、チケットを買うのをすっかり忘れていたこのお芝居。
ネットで、当日窓口引き替え券が若干枚予約できることがわかったので、会場が近かったこともあり、ぶらっと行ってみることに。
徒歩15分ほどで、会場の森ノ宮ピロティホールに到着。こういう時は、都会暮らしって便利だなあって改めて思ってみたりします。
二人芝居、なんですが、主演が、斉藤由喜さん×長澤まさみさんっていう、有名な女優さんだからかどうか、開演15分前で、入場口は混み混み、長蛇の列でしたがそれでも、当日引き替え券って出るもんなんですね〜。前から9列目の真ん中寄り、けっこういい席でしたよ。

斉藤由喜さんが、清少納言、長澤まさみさんが、紫式部を演じています。
といっても、平安時代のお話しっていう訳ではなくて、時代は現代で、とある文学賞の選考委員をおおせつかった二人が選考日前夜バーで待ち合わせて、飲みながら女のバトルを繰り広げるっていう設定。

バトルの内容もとっても面白かったんですが、私が注目しちゃったのは、やっぱり女優さん達の衣装の色(笑)
時代設定が現代なので、十二単ではなくて、現代風のドレスなんですが、紫式部は・・・・・
紫×黒のドレス。

まあ、紫式部だけに。

べったべた、そのまんまやん!!

でも、そうでしかありえませんよね、やっぱりね(笑)

紫っていうと、「変容」とか「統合」みたいなキーワードがありますが、そこからのイメージで、「魔女」みたいなイメージもありますよね。一般ピープルとはちょっと違う魔法を使って、変容を起こしちゃう人、みたいな。お芝居の中では、紫式部は、新進気鋭の若くて美貌の、でも頭が切れすぎてちょっと行動が読めない不思議ちゃんなの?みたいな天然キャラなんですが、その感じが、紫×黒、身体にぴたっとフィットする肩だしサテンの黒のドレスと、紫のふわっふわのチュチュと、ストールの衣装でとってもよく表現されてる。同じ「魔」でも、周りをふりまわす小悪魔的な感じ、とでもいうのでしょうか。

彼女の持ち物は、紫で統一されていて、携帯も、毎日持ち歩いているらしいPCも紫。でも、PCの起動音は、Macの起動音。ア・アーチストっぽい・・・・芸細っ!でも、ラベンダー色のMacって・・・・・・アップル社は間違っても作ってくれなさそうですね(笑)

それに引き替え、清少納言の衣装の色は、というと・・・・・グリーン×赤。

これ、最初は、ちょっと意外でした。
史実上の清少納言って、言わずと知れた「枕草子」の作者ですが、鋭い視点かつ軽妙な語り口のエッセイスト、才女っていうイメージが強いです。だったら、どっちっかっていうとブルーとか水色とかそんな感じの色の方がイメージに合うんじゃないのかな、なんて最初は思ったのでした。
でも、お芝居が進んでいくうちに、衣装の色が、ちゃんと絶妙に清少納言のキャラクターを表現しているんだな、ということがわかってきました。

お芝居上の清少納言って、紫式部より先輩格で、「枕草子」で一世を風靡して、随筆家としての確固たる地位を築いていながらも、才能ある後進達が続々登場して、いつか自分が忘れ去られていくんじゃないか、という不安を抱いている大御所一歩手前の中堅どころ、みたいなキャラクターです。女としてのビジュアルに自信がなくて、自分には書くことしかない!と思いながら必死に書くことにしがみつく、というか、努力を重ねている、でも、案外お人好しで、人のことを憎みきれない。マジメにお仕事してて、責任感も強い。でも、その責任感って、周囲の目を気にする小心っぷりから出てる可能性も・・・みたいな。

「ブーリン家の姉妹」のところでも書いたことがあるけれど、緑って、嫉妬を表す色でもあります。自分だけ、の時には感じないのに、自分と「比較」する他人が登場してきた時に初めて感じる、嫉妬の感情。清少納言にとって、紫式部は、その才能を認めたくないけど認めざるをえない、後輩です。しかも、自分には努力しても絶対手に入らない(と彼女が思いこんでいる)美貌と抜群のスタイルの持ち主。嫉妬せざるをえない対象ですね。でも、お人好しで小心者がゆえに、彼女の言動や気持ちにちょっとでも寄り添おうとし、振り回される・・・差し色の赤も、彼女の中のパッションとか怒りとか、派手さはないけど、紫式部とは違う意味での原始的なエネルギー、みたいな部分をさりげなく表現していて、いい感じに効いてます。

衣装デザイン、誰なんだろう?って調べてみたら、ワダエミさんでした。

・・・・なるほど。さすが・・・・

ワダエミさんって、日本の色を現代に持ち込んでくるのがとってもお上手な方ですね。逆か、なあ。なにせ、デザインやなんかは、時代考証的にはまずないんだろうけど、でも、現代の色じゃないな、というのか和テイストだな、みたいな不思議な雰囲気を絶妙に出してくる方だな、っていう感じがします。例えば清少納言の緑色も、同じ日本人でも、石岡瑛子さんとかだったら、全然違う緑になるんだろうなああ(笑)

そして、紫と黒と、緑と赤の舞台が、大人っぽい渋〜い空間を作り出していましたよ。


バーでの会話っていう設定なので、当然のごとく二人はお酒を飲むんですが、二人の頼むお酒も対照的です。
清少納言は、ラムとかテキーラとか、ショットで頼んじゃったりして、最初から飛ばしまくるんだけど、途中からは、実はお酒をそんなに飲みつけてないことが紫式部にばれちゃて、その後からは、紫式部のいいなり。それに引き替え、紫式部はというと、ドライマティーニとかショートカクテルも織り交ぜつつ、基本はウィスキーのはしご。熟成年数とか銘柄によって、ハイボールとか、ロックとか、ストレートとか、飲み方を変えてて、かなり飲み慣れてますな、みたいな感じ。

優秀なバーテンさんは、女の人のお酒の注文の仕方によって、その人がどんな男の人とつきあってるのか、かなり正確にわかる、あなたって、年上の男性とのつきあい、長いでしょ?って聞かれた清少納言が、20歳年上の彼氏と、付いたり離れたり、腐れ縁ね、って答えて、で、あなたの飲み方は?と尋ねる。
聞かれた紫式部の答え。「そりゃあ、女友達と朝までコースの飲み方っすよ」って・・・・・・・

が、がーん・・・・・・

ばれてるじゃん・・・!!(笑)


私の飲み方、完璧に紫式部コースです・・・・・・

昔は、可愛らしくカクテルなんかも頼んでたけど、今じゃ、バーボンロックが基本、熟成タイプはやっぱりストレートだよね、みたいな、みたいな!?

体力なくて、シンデレラよろしくその日中には帰りますが・・・いや、シンデレラとか言ってる場合じゃないですね・・・・(笑)

三谷幸喜さんご自身はほとんどお酒を飲めないそうで、周りのお酒に詳しい人達に取材したんだとか。それにしても、バーに行ったら、ちょっと気をつけようっと(笑)

でも、そうだとしたら、紫式部、やっぱり、小悪魔っていうよりは、うら若き独立系美魔女予備軍っていうところなんですかね〜。
で、結局なんじゃかんじゃいって、安定してるのは、緑をまとった清少納言、なのかもしれません。


演じているお二人の女優さん、ホントに綺麗ですよ。長澤まさみさんは、若さまっさかりで、スタイル抜群。でも、ご本人は、女性的っていうよりは、少年っぽい方なのかな、と思いました。斉藤由喜さんは、役柄とは違って(笑)、ホントに顔小さくて、綺麗です。ぽわぽわっとした方なのかな、と思ってたら、全然違ってました。年を重ねるごとにどんどん綺麗になっていく、ってできるんだなあ、みたいな。もちろんものすごい努力が必要なんでしょうけどね。守りに入っちゃいけませんね〜、いくつになっても、ね。

紫式部ダイヤリー
大阪公演 2014年12月11日〜21日 森ノ宮ピロティホール


by sound-resonance | 2014-12-14 18:30 | 観る・読む・聴く