ニキ

東京の国立新美術館で開催されている「ニキ・ド・サンファル展」に行ってきました。
母国フランスで、開催された大回顧展の内容が日本に巡回してくるということで、遠いながらも、東京まで足を伸ばしてきました。

美術館の天井には、巨大な「ナナ」型バルーンが。衣装は公募で、7歳の子のデザインだそうです。
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ニキのことを知っている日本人がどのくらいいるのかはわかりませんが、実は、彼女の単独の美術館があった世界で唯一の国という意味で彼女は日本とご縁のあったアーチストでもありました。

那須高原にあったニキ美術館は残念ながら2011年に閉館してしまいましたが、私、開館していた頃に2度ほど訪れたことがあります。1度目は、どしゃぶりの雨、2度目は、大雪・・・・・・やっとのことでたどり着いたら、二度とも「取材ですか?」と聴かれました(笑)いえいえ、ただのニキ愛好家です、と答えて、館内に入ったら、人が誰もいなくて、貸し切り状態。1度目は、私が美術館を後にするまで、誰も来なかったような気がします。ニキ、独り占め(笑)今では、考えられないくらい贅沢な時間でした。

今回の展覧会は、そんなことはなくて、平日にもかかわらず、そこそこ人が入っていましたよ。
彼女がアートを始めた初期の作品から、「射撃絵画」、「ナナ」のシリーズ、日本との関係、生涯をかけて情熱を注いで完成させた「タロットガーデン」に至るまで、ニキのだどった軌跡が一通りわかるような構成になっていました。

ニキは当初、うつ症状の治療のためにアートの世界に足を踏み入れました。最初の頃の作品は、暗い限られた色調で、停止した感じ、とか、閉塞した感じを受けます。色とりどりの塗料をつめた缶や袋をキャンバスに石膏で塗り固めて、それをライフルで撃つ、という衝撃的な「射撃絵画」では、塗料以外に、様々なオブジェが石膏で塗り固められています。兵隊、飛行機、人形、わに、聖母マリア像、キリスト教の聖人達・・・・・・・・厳格なカソリックの家庭で育ったニキにとっての当時の世界は、堅苦しく窮屈なもので、肉体を持つ生身の自分とは、フィットしない違和感を感じていたのでしょう。世界を白い石膏で、塗り固めて、塗料(色)も、一旦白い石膏で塗り固めて、ニキはそれをライフルで撃ちます。弾丸によって、「色」の入った袋ははじけて、キャンパスに色が広がります。それは世界を「リセット」して、彼女が「色」を新しく与えるための儀式のようにも見えるのです。
色は与えられても、それと同時に傷も負うような、そういう痛みをも感じさせる作品です。

やがて、射撃するという行為に快楽を感じ始めた自分に恐怖を覚えるようになった彼女は、射撃絵画というパフォーマンスから離れることを決意します。そして、「ナナ」のシリーズの製作を始めるのです。

ナナは、ニキの友人の妊娠した姿を見たことがきっかけとなって生まれたんだそうですが、最初の頃は、まだそれほど明るい色使いではありません。頭が小さくて、お腹がでっぷりしていて、足を投げ出したり、手を伸ばしたり、はたまた逆立ちしたりと、自由な格好をしているナナ。塗り込めれた窮屈な世界から、彼女はまず女性の身体を取り戻し、解放されました。そして、ナナは次第に底抜けに明るい色をまとい始めるのです。

最初にナナが明るい色に彩られた瞬間を想像すると、いつも、うきうき、ワクワクするような気持ちになります。ニキ、本当に良かったね、って言いたくなるような。これまでは、それほど感じたことがなかったけれど、ボディに直接塗りつけられた黒で縁取りされたカラフルな色達は、今回タトゥーのようにも見えました。太古の昔、人々は、魔除けの意味を込めて身体に様々な紋様をまといました。ニキにとって、ナナをカラフルな色で埋め尽くすことは、「魔除け」みたいな意味合いもあったのかもしれません。それに、ナナって、豊穣の女神とも推定されている、日本で出土される土偶にも似ています。キリスト教の、処女でありながら母であるという聖母マリアのイメージの束縛から抜け出して、彼女が太古の昔から存在する豊穣の女神のイメージと出会ったことは、とても面白いですね。

ニキは、迷信として、科学的社会から排除されていた神秘の世界、神話の世界、精神的な世界にも、興味を持っていました。日本にかつて存在したニキ美術館の館長の招きによって、日本を訪問した際には、仏教のイメージに触れ、「ブッダ」を製作しています。

館内では、この作品と、ふくろうの椅子だけが撮影OKです。
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タロットの世界観にも興味を持っていて、20年以上の歳月をかけて、イタリアに、タロットカードの22のモチーフの彫刻を配置した「タロットガーデン」を建設しました。
実は、その昔、私、タロットガーデンにも行ったことがあるんですが(なつかしい・・・)、そのお話は、またの機会に・・・・・・。

那須高原に行ったり、イタリアにまで行く位好きだったニキですが、最近では、作品を見る機会もなくなっていました。でも、この展覧会で、いろんなことを思い出したり、新たな発見がありました。期間を置いて、再び見る、取り組むっていうのも、たまにはいいもんですね。

ニキ・ド・サンファル展 国立新美術館 12月14日(月)まで
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by sound-resonance | 2015-12-02 21:50 | 観る・読む・聴く | Comments(0)