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静かな時間

個人的には、特定の宗教の信者ではない、あえていうと、無宗教な感じなんですが、よく神社や教会には行ったりします。それって信心深いという意味ではなくて、何を求めているか、というと「静けさ」なのだと思います。「静か」だという意味で、美術館とか図書館も好きなんですが、時代の流れで、美術館も図書館も必ずしも「静か」な場所ではなくなりつつあり、神社や教会が文字通り最後の「聖域」だな、と思うこともあります。

時間があるとたまに行ったりするのが、玉造の「聖マリア大聖堂」。日本画家の堂本印象さんの「聖母子」の壁画があります。


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ここの聖母子像は、日本画家が描かれたということもあるんでしょうか、とても和風な感じの聖母子です。
西洋的な聖母マリア様がブルーのケープ(マント)をまとっている姿で描かれることが多いのに対して、ここのマリア様は、錦のような衣をまとっておられます。菊、桜、紅葉など様々な植物が着物の柄として描かれています。特に朱色が和な感じを強調している感じです。朱色をオレンジ色と言ってしまうには語弊がありますが、ブルーとオレンジということでいうと補色関係なのも面白いな、と思います。

お顔はすっきりとした理知的な感じで、優しげに描かれていることの多い西洋のマリア様に比べてやはりちょっと超越した感じ、仏顔に近い感じがするのも、日本画ならではだな、と思わせるところがあります。聖母子像の傍らには、玉造に縁のあるキリシタンである高山右近と細川ガラシャが描かれています。壁画には高山右近や細川ガラシャが生きた安土桃山時代の文化・風俗が反映されているのだそうです。

堂本印象さんは、ヨーロッパ各国の聖母子像を見て、作家がそれぞれの理想を絵の中のマリア様やキリストに託していることを発見し、日本には日本の聖母子像があってしかるべきだと信じたことからこの壁画を制作されたのだそうです。

他にも、こういった和風なマリア様が描かれた教会があるのかもしれないし、外国に行くと教会にはよく行くものの、日本に存在する教会の中にはあまり入ったことがないことに今さらながら気づいたんですが、個人的には最初にこの聖母子像を見た時、題材が洋、表現が和の和洋折衷な感じが斬新で、強烈な印象を受けました。背景が金箔、マリア様の衣装で目立つ色が朱色、とどちらかというと暖色系でまとめられている絵なんですが、この壁画に向かい合っていると、心がしんと落ち着いてくるのが不思議なところです。

でもそれは、教会全体の圧倒的な静けさの影響が大きいんでしょうね。ミサの時間には信者さんが集まってこられるんでしょうが、普段の教会にはお祈りに来られている方が数人いらっしゃったりはしますが、ほとんど人がいません。たまにシスターが用事で顔を出されても、祈りを邪魔してはいけないということでしょうか、いい意味でほおっておいてくださいます。

もちろん都会の中の教会なので、外の通りを行き交う車の音などは聞こえてくるんですが、人の声がしないというのが大きい。こういった静かな空間が一般に解放されているというのは本当にありがたいです。この静かな空間がいつまでも守られるよう願ってやみません。

さて、明日は冬至ですね!冬至といえば、かぼちゃを食べたり柚子湯に入ったりが恒例ですが、太陽の光の一番少ない日、太陽の光を浴びた作物でオレンジ色の光をいっぱい取り込みましょう。オレンジ色は、気持ちをリラックスさせ、豊かさをもたらしてくれますよ。

by sound-resonance | 2017-12-21 21:21 | 観る・読む・聴く