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六条御息所→マゼンタ:すべての色を含む色

 色で読む源氏物語シリーズ、今日は、六条御息所です。
 私が、色のイメージで源氏物語を読んでみたら面白いかも!?と思ったのは、光源氏と紫の上の関係が色で浮かんできたからで、だったら、あの人は何色?あの人は?とイメージをふくらませていくのがとても楽しかったのですが、六条御息所が一体何色なのかについては、なかなかイメージがわいてきませんでした。彼女は一体何色だろう?考えること、幾星霜。あ!マゼンタだ〜!!思いついた途端、イメージがどば〜っと浮かんできました。
 ということで、マゼンタの六条御息所について。
 六条御息所は、先代の帝の妻で、帝亡き後、極々早い時期に光源氏の恋人となった女性です。家柄、地位、財力、美貌、教養もすべてを持ち合わせた高雅な女性として描かれています。それだけにプライドも相当なものだったでしょう。光源氏よりも年上でしたが、葵の上のようにそれがネックになることはなく、むしろ子どもを産んだ経験がある母性をも持ち合わせた大人の女性としての彼女に光源氏は最初はどんどん引き込まれていきます。
 彼女の方も随分年の離れた光源氏のことを「お子ちゃま」扱いする場面もあったのではないでしょうか。むきになってことさら大人ぶる光君。最初は一方的に光君が押しかけていたのかもしれない二人の関係も、いつしか深いものになるにつけ、六条御息所も光君を深く愛するようになります。
 深く愛すれば愛するほど、彼を丸ごとそのまま受け入れたいという思いと、彼の若さ故の至らなさを補いたいという思いに引き裂かれていったのではないでしょうか?そこは、プライドの高い女性の切ない所。マゼンタとは本来、無条件の愛を意味しますが、恋人となった時から一人の女性として、彼を丸ごと受け入れたいという思いと、先代の帝の妻だった自分にふさわしい恋人になってもらわないと困るという思いが常に交錯していたのではないか、そんな気がしたりします。
 光君もまだ、若かった。そんな彼女との関係を重苦しく感じるようになり、徐々に六条御息所の所に通う足が遠のきます。特に彼は母親の保護する感覚を知らずに育っています。彼女の「保護し、包み込む感じ」が慣れない居心地の悪い空恐ろしいものだったのかもしれません。彼の気持ちが冷め、彼が離れていくのを確認することは、彼女のプライドにとって何よりも耐え難いものでした。
 ここで、マゼンタが、ポジティブからネガティブに反転します。
 すべてを包み込む光が、すべてを呑み込む闇へ。
 彼女自身もその闇に呑み込まれ、彼女のパワーは彼女のコントロールを離れます。そして、彼女の魂は生き霊となって失った愛を求めて闇夜をさまようのです。
 切ない、切なすぎる〜!
 無意識のうちに、葵の上の命を奪ってしまった六条の御息所の生き霊はひたすら怖いですが、彼女が髪の毛に染みついた護摩の香りに、知的であるが故に自らの生き霊がさまよいでたことに気づき、深く恥じ入るシーンには、なんだか同性として切ないものを感じてしまいます。
 光君が、彼女を包み込めるくらい十分に大人の男性だったなら、彼女の魂はさまよわずにすんだのに。でも、そうだとすると、最初から六条御息所の所に押しかけてこないか・・・

☆次回は「明石の御方」を取り上げます

by sound-resonance | 2010-02-06 15:02 | 色で読む源氏物語